運送業に多い労災事故とは?

運送業でよくある労災事故とは? 

運送業においては、他の業種に比べて労災事故の発生率が高く、様々な場面で事故が発生しています。

中でも他の業種に比べて圧倒的に多いのは交通事故です。ほかにも、荷物の積み下ろし中の事故やフォークリフト・台車などの機械による事故、昇降中・荷台上での転倒・墜落、交通誘導・構内作業中の接触事故などが多く発生しています。

運送業で後遺障害が残る身体的怪我の典型例

運送業においては、荷物の積み下ろし作業や車両の運転、昇降時の転倒・転落、さらには交通事故といったリスクが日常的に存在します。これらの業務中に発生する労働災害の中には、長期間の治療を要し、完治せず後遺障害として身体機能に深刻な影響を残すものもあります。以下では、運送業でみられる後遺障害の典型例を紹介します。

1 脊椎損傷による神経障害

重い荷物を無理な姿勢で持ち上げる、あるいは車両の荷台から転落することによって腰椎や頸椎を損傷し、神経障害が残ることがあります。

腰痛やしびれ、足の麻痺などが慢性的に生じ、歩行や長時間の立ち作業、座位保持が困難になる場合があります。特にヘルニアや脊髄損傷を伴う場合は、労働復帰が難しくなるケースもあります。

2 四肢の骨折・切断による運動機能障害

荷役中に指や手を挟まれる事故や、交通事故による激しい衝撃で腕や脚を複雑骨折する場合があります。これらの損傷は適切な治療を行っても関節の可動域制限や筋力低下が残ることがあり、物を持つ、運ぶ、運転するなどの業務に著しい制限を伴います。重度の場合は義手・義足が必要になることもあります。

3 交通事故による脳挫傷

トラックや配送車での業務中に追突・衝突事故が発生し、頭部に強い衝撃を受けると、脳挫傷や外傷性脳損傷(TBI)を引き起こすことがあります。こうした損傷は記憶力の低下、注意力障害、感情のコントロール不全などの認知機能障害につながる可能性があり、身体的には見えにくいものの、業務遂行や社会生活に大きな支障を及ぼします。

4 視力や聴力の障害

交通事故の衝撃で眼球や聴覚器官にダメージを受けた場合、片目の失明や難聴が生じ、運転や接客業務に制限が生じます。

後遺障害認定の流れと注意点

1 労災事故の発生と治療の開始

労働災害が発生した場合、まずは会社を通じて労働基準監督署に労災申請を行い、「療養補償給付」により治療を受けます。

2 症状固定の判断

治療を続けてもこれ以上の回復が見込めない状態(=「症状固定」)に達したと医師が判断した時点で、治療を終了します。症状固定後も障害が残っている場合、後遺障害の可能性が出てきます。

3 後遺障害の申請準備

申請者は以下の書類を用意します

・障害補償給付支給請求書

・診断書(障害に関するもの)

・レントゲンやMRIなどの画像、医療記録

・事故状況や業務内容の説明資料

4 労働基準監督署へ提出

書類一式を所轄の労働基準監督署に提出します。

労基署は、提出された医学的資料や申請者との面談をもとに、障害の程度と因果関係を審査します。

5 障害等級の認定(1級~14級)

労働基準監督署の審査により、障害の内容が14等級のいずれかに該当すると認められれば、障害補償給付(年金または一時金)が支給されます。

・等級1~7級:障害補償年金

・等級8~14級:障害補償一時金

6 不服申立て(必要な場合)

等級や認定結果に納得できない場合は、「審査請求」や「再審査請求」などの行政不服申立てが可能です。

7 注意点

医師は、治療の専門家ですが、後遺障害認定の専門家ではございません。

診断書に書いてもらう傷病名、症状(痛みやしびれ)、必要な検査結果、可動域について、被災者側から医師に伝えなければ、漏れが生じて適正な後遺障害等級の認定が受けられないことがあります。

被災者の後遺障害が適正に認定されるためには、診断書の作成が一番重要です。

そして、提出された診断書に基づいて、労基署は被災労働者本人との面談を行い、後遺障害の認定について判断します(事案によっては医師に照会を行う場合もあります)。

そのため、後遺障害の認定を受けるためには、この診断書の記載内容等が非常に重要なものなのです。

この診断書に不備や不正確な表現等があることで、適正な後遺障害の認定が受けられない可能性も十分あります。

会社に損害賠償請求ができるケースとは

労災事故には、「他の従業員の不注意によるもの」と「自分一人で作業中の事故」の2つのパターンがあります。

他の従業員の不注意による事故では、その従業員に不法行為責任(民法709条)、会社に使用者責任(民法715条)が生じます。被害者は従業員本人または会社に損害賠償請求ができ、話し合いで会社が賠償に応じることもあります。使用者責任に基づく請求の時効は、症状固定時から3年です。

一方、自分だけで作業中に起きた事故の場合、会社に対しては安全配慮義務違反による損害賠償請求が可能です。安全配慮義務とは、従業員の安全を守るために会社が取るべき措置で、違反があると認められれば会社に賠償責任が生じます。教育不足や機械の欠陥、安全衛生法違反などがあると責任を問いやすくなります。この場合の時効は10年です。

重大事故では、労基署の是正勧告や刑事処分があれば、安全配慮義務違反を問える可能性が高まります。

会社に対して安全配慮義務違反を問えるかどうかご不明な方は、一度、ご相談ください。

当事務所のサポート内容

後遺障害認定に際しては後遺障害診断書の記載が非常に重要であり、記載内容によっては、認定される等級結果や補償にも大きく影響が出る可能性があります。

また、ご本人が労基署で面談する際にも、初めてのことで、ご自身で上手く症状等を説明できるかどうか不安な方も多いかと思います。

当事務所は、労災被害に遭われた方の後遺障害の申請のサポートに注力し、適切な障害診断書となっているか等のチェックを行うだけでなく、ご本人の労基署での面談時に上手くご自身の症状を伝えることができるように、事前に打ち合わせ等を実施しサポートさせていただきます。

福岡市と北九州市に事務所がありますので、お近くの事務所で弁護士と直接打合せをすることが可能です。

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