転落や転倒、機械への挟まれなどにより、腕の骨折などの労災事故が起こるケースがあります。
労災として認定されるためには
労災として認定されるためには、業務災害と通勤災害(通勤中に怪我をした)の2種類があります。
業務災害
仕事が原因で怪我をしたと認められるためには、業務遂行性、業務起因性が必要となります。
① 業務遂行性
労働者が雇い主の支配・管理下にある状態で起きたかどうかという点です。勤務時間中(残業中を含む)に事業所内で仕事をしている場合や、社外での営業中などが認められる例です。
② 業務起因性
仕事と怪我の間に相当な因果関係があるかという点です。作業中に機械に巻き込まれたり、荷物を運搬中に転倒した場合などが典型的な認められる例です。
休憩中に私用で外出している際の事故や、仕事とは関係のない持病が原因である場合は該当しません。
通勤災害
通勤中に怪我をした場合には、就業との関連性、合理的な経路と方法、逸脱・中断がないことが必要となります。
① 就業との関連性
仕事の行き帰りであることです。
② 合理的な経路と方法
普段使っているルートや通常認められる交通手段であることです。
③ 逸脱・中断がないこと
日用品の買い物などのささいな行為ではなく、途中で飲食店によるなど通勤ルートから大きく外れたり中断していないことです。
通勤災害については以下の記事で詳しく解説しております。
▼労災事故~通勤災害・交通事故【弁護士が解説】
労災で腕を骨折した場合に残りうる後遺症とは
腕を骨折した場合に残りうる後遺障害として、腕を動かす能力(肩、肘、手首などの関節の可動域)が損なわれる「機能障害」、痛みやしびれといった「神経障害」があります。
機能障害
腕の骨折による機能障害とは、関節や筋肉の損傷などにより腕の関節(肩、肘、手首)の動きが損なわれた後遺障害のことをいいます。
腕の機能障害の場合、以下の後遺障害等級に該当する可能性があります。
| 等級 | 障害の内容 |
| 1級7号 | 両上肢の用を全廃したもの |
| 5級4号 | 1上肢の用を全廃したもの |
| 6級5号 | 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの |
| 8級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
| 10級9号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
| 12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
変形障害
腕の骨折による変形障害とは、骨折した箇所が元の形状や機能と異なる形で癒合してしまうことにより、腕の形状そのものが変化してしまった状態です。
腕の変形障害の場合、以下の後遺障害等級に該当する可能性があります。
| 等級 | 障害の内容 |
| 7級8号 | 1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
| 8級8号 | 1上肢に偽関節を残すもの |
| 12級8号 | 長管骨に変形を残すもの |
神経障害
腕の骨折による神経障害とは、骨折後に神経が損傷することによって腕に痛みやしびれが残った後遺障害のことをいいます。
腕の神経障害の場合、以下の後遺障害等級に該当する可能性があります。
| 等級 | 障害の内容 |
| 12級12号 | 局部にがん固な神経症状を残すもの |
| 14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
労災保険から受けられる給付・補償の種類
労災で受けられる補償内容は、①休業(補償)給付、②療養(補償)給付、③障害(補償)給付、④遺族(補償)給付、⑤傷病(補償)給付などです。
① 休業(補償)給付
労災により仕事を休んだ場合、4日目以降から給付基礎日額の60%が支給され、さらに20%分が特別支給金として支給されます。結果として、収入の80%が補償されます。給付基礎日額は、災害発生日の直前3か月間の賃金総額を暦日数で割った額です。
② 療養(補償)給付
労災で病気やケガをしたとき、治療費や入院費などの自己負担なく医療を受けられる制度です。労災発生から治癒または症状固定までの期間に適用されます。
③ 障害(補償)給付
症状固定後に障害が残った場合、等級に応じて年金(1~7級)または一時金(8~14級)が支給されます。
④ 遺族(補償)給付
労災で労働者が亡くなった場合、生計を共にしていた遺族に年金が支給されます。該当する遺族がいない場合は一時金が支給されます。
⑤ 傷病(補償)給付
1年6か月以上治癒しない場合、傷病等級1~3級に該当すれば年金が支給されます。該当しない場合は、休業給付が継続されます。
慰謝料や逸失利益の全額は補償されない
労災保険は会社の落ち度のあるなしにかかわらず、業務中の事故による負傷等であれば一定額を労働者に給付するもので、労働者にとって貴重な制度ですが、労災保険は国が定めた制度として、いわば最低限の補償給付を行うものといえます。
つまり、労災保険では給付されない労働者の損害があり、例えば①慰謝料(入・通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料)や、②事故前収入の100%分の休業補償などは支払ってもらうことが出来ません。
労災事故の発生について、会社にも責任があれば、労働者は労災保険では補償給付を受けられない損害項目である、①慰謝料(入・通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料)や、②100%分の休業損害の各賠償請求を会社に対して行うことができます。
会社の責任を問う「損害賠償請求」という選択肢
会社が負うべき「安全配慮義務」とは?
自分一人で作業中に怪我をした場合など、労働者の不注意が原因と思われる事故でも、会社の安全管理体制に不備があれば、安全配慮義務違反として損害賠償を請求できます。ただし、会社は「労働者の過失で事故が起きた」と主張して責任を否定することがあります。
安全配慮義務は、従業員の心身の安全を守るために事業者が負う義務で、業種や作業内容などを総合的に考慮して判断されます。教育不足や会社の管理する設備の不備が原因の場合は、違反を問いやすいです。
また、労働安全衛生法や規則に違反して事故が起きた場合も同様です。一方、工場内での単なる転倒(階段を降りているときに滑って転倒したケース)などは、安全配慮義務違反を問うのは難しいです(ただし労災は適用されます)。
重大事故で法令違反が認められれば、会社の責任を問いやすくなります。損害賠償請求の時効は10年です。
安全装置の不備や教育不足は会社の責任が問われる典型例
安全配慮義務の内容は、業種、作業内容、作業環境、被災者の地位や経験、当時の技術水準など様々な要素を総合的に考慮して決まります。
そのため、具体的な被災状況をお伺いしてからでないと、会社に対して安全配慮義務違反を問えるかどうかは分かりません。
もっとも、当事務所の経験上、「会社の従業員に対する教育不足が原因で被災した」場合や、「会社が管理支配する場所で、会社から提供された機械や道具が原因で被災した」場合には、比較的安全配慮義務違反を問いやすいと言えます。
当事務所のサポート内容
後遺障害認定に際しては後遺障害診断書の記載が非常に重要であり、記載内容によっては、認定される等級結果や補償にも大きく影響が出る可能性があります。
また、ご本人が労基署で面談する際にも、初めてのことで、ご自身で上手く症状等を説明できるかどうか不安な方も多いかと思います。
当事務所は、労災被害に遭われた方の後遺障害の申請のサポートに注力し、適切な障害診断書となっているか等のチェックを行うだけでなく、ご本人の労基署での面談時に上手くご自身の症状を伝えることができるように、事前に打ち合わせ等を実施しサポートさせていただきます。
福岡市と北九州市に事務所がありますので、お近くの事務所で弁護士と直接打合せをすることが可能です。
面談日程調整のお問い合わせは、電話(福岡:092-737-7290、北九州:093-616-9745)
でもLINEでも可能です。




