1 建設業でよくある事故とその特徴
(1)労働災害はどのような業種でも発生するものですが、建設業における労働災害の発生率は、労働災害全体の約2倍であり、厚生労働省の発表によると令和5年の労災事故による死者は755人となっていますが、そのうち建設業における死者は223人と労災による死者全体の約30%にものぼります。他方で、死傷者数をみると全産業のうち4番目で全体の11.4%にとどまっています。
このように、建設業における労災事故は、「墜落」、「転落」、「建設機械へのはさまれ」、「土砂崩壊」など、死亡に至ったり、障害が残ったりする重篤な災害が発生する可能性が高い業種になっています。
(2)建設業においては、高所作業が多いという特徴があることから、死亡事故・死傷事故のいずれにおいても「墜落・転落」が最多となっており、そのほか「飛来・落下」、「はさまれ・巻き込まれ」、「転倒」、「交通事故」などが上位になっています。また建設業においては、屋外作業がどうしても多くなるため、熱中症を含む「高温・低温物との接触」が他の業種に比べて多いという特徴もあります。
2 労災事故にあった場合、まずは労災申請を!
労働者が業務を原因として負傷してしまった場合、労災保険給付を受けることができ、そのためには労災申請をする必要があります。
労災保険は、事故に遭ってしまった被災労働者に過失(落度、ミス)があってもなくても関係なく、一定の給付(療養給付、休業給付、その他)を受けることができます。
もし、労災保険の申請をするにあたって会社が協力してくれないといった場合、すぐに弁護士にご相談されることを強くおすすめします。
3 建設業特有の「下請け構造」と労災問題
建設業においては、下請け・孫請けに仕事を依頼していることも多いですが、労働現場の管理責任について「安全配慮義務違反(労働者が安全で健康に働くことができるように配慮する義務)」や「不法行為責任(事故の原因が会社の活動そのものである場合や、労働現場の建物・設備などに危険があった場合などに認められる責任)」などを根拠として勤務先会社・元請に対して多額の損害賠償請求が認められるケースも多くあります。
被害が大きくなった結果、労災保険給付で相応の補償(数百万円)がなされることも少なくありませんが、それ以上の請求が可能な場合も決して少なくないのです。
4 会社・元請けに対して過失を追求するために
労災事故においては、様々な角度から「事業主は事故を起こさないために労働者の安全に配慮したのか」という検証が行われます。
たとえば、「転倒事故」が発生したとなれば、例えば下記のような点について、会社・元請けの過失が検証・追及されることになります。
・「滑った場合」-床に水や油が残っていて滑りやすい状態となっていなかったか
・「何かにつまずいた場合」-床の凸凹や段差があったり、商品を放置していたりなどしてつまずきやすくなっていなかったか
・「段差を踏み外した場合」-荷物を抱えて階段を上り下りしたり、暗い場所であったなど、足元が見えづらく、足を踏み外しやすくなっていなかったか
・「危険な箇所があった場合」-転倒防止のための安全教育がなされていたか、危険場所にステッカーを掲示するなどの危険の「見える化」はなされていたか
5 早めの相談・依頼で安心を
労働災害に遭われた被災労働者が、ひとりで会社や保険会社とやりとりをするのは困難を極めます。
また、事故態様に関する資料の収集も容易ではありません。
ほとんどの方が労働災害に遭うこと自体初めての経験ですから、ご自身ではよく分からないことが多く、どのように交渉を進めればよいかわからず、非常にストレスを感じる結果になってしまいます。
弁護士にご依頼いただくことで、会社側にどの程度責任があるのか否かをより正確に判断し、会社側と対等に交渉することが可能です。
また、「弁護士に依頼するかどうかは未定」という方も、お早めにご相談いただくことで、弁護士はその方の具体的な事情を踏まえたアドバイスができますので、ご不安の解消や、今後の方針を立てるお役に立つことでしょう。
労災事故に遭われて、お悩みの方はぜひ一度、ご相談なさってみてください。
面談日程調整のお問い合わせは、電話でもLINEでも可能です。